娘から「結婚したい」の前に「家を出たい」と言われるなら話はわかる。順序として、結婚よりまず自立せよ、だ。「ひとつ屋根の下、家族と暮らすと成長しない」（米国人作家リチャード・バック）との言葉は基本的に正しい。親元から離れることで親の気持ちも苦労もわかるようになる。近すぎては見えるものも見えなくなる。社会に出てから初めて学校で習わない社会常識を学ぶ。
「常識とは18歳までに積み上げられた偏見」とはアルバート・アインシュタインの至言だが、日本の若者は社会に出てから本格的に偏見を植えつけられるから、常識が身につくのはもう少し先だ。
家にいれば、すべて親任せが子どもの習性だろう。いけないと知りつつ、親も子どもについ甘くなる。わが親子も実態は変わらない。真に成長するためにも、娘よ、まず自立せよ、だ。
テニス仲間のHさんが亡くなった。私より10歳ほど年上だったけれども、テニスのみならず卓球も毎週取り組む、気力体力とも充実したスポーツマンだった。昨年の夏に肺がん（胸膜中皮腫）の手術を受け、その後自宅療養中だった。
葬儀にはHさんの人望の厚さ、交遊の広さを表すように、大勢の参列者が会葬に訪れ、故人の冥福を祈った。私も他のテニス仲間10人と遺影の前で手を合わせた。Hさんは温厚誠実な人柄で、声を荒げることのない本物のジェントルマンだった。私たち後輩にとって「人生かくあるべし」という良きお手本として、まだまだ元気にラケットを振り回してほしかった。
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