北海道で行方不明になっていた7歳の男児が6日ぶりに保護された。誰もが絶望視していただけに、奇跡的な生還に関係者のみならず日本中が喜びに沸いている。
今や日本でいちばん有名な小学生になった田野岡大和クン、君は人一倍の生命力と運気で、自身の人生ばかりか両親の人生も救ったね。お父さんもお母さんもまさかこんな事態になるとは100万パーセント考えていなかったことで、「このクソガキめ、少しは反省しろ」といつもの調子でしつけたのがとんでもない騒ぎに発展。お父さんは最悪の虐待オヤジとして、テレビの前で謝罪する羽目に。
これで大和君が命を落としていたら─いや、3日経った時点で日本の誰しもが「ああ、だめだな」と思ったにちがいない─お父さんは虐待最悪オヤジに殺人鬼の称号まで与えられ、その汚名はお父さんはおろかお母さんほか田野岡一族にまで生涯の名折れとして語り継がれただろう。
大和クン、きみは一躍田野岡家のワルガキからヒーローとなったね。みんながやさしくきみをチヤホヤしてくれるだろう。これからはお父さんもお母さんもきみをきつく叱ることがなくなるかもしれない。でもね、きみはここで調子に乗ってはだめだぞ。元はと言えば、きみが人や車に石を投げて遊ぶようなことをしたのがいけないんだよ。そこをしっかりと反省し、ご両親に心から謝るべきだろう。そして、強い体に生み育ててくれたことに感謝しなければならない。それができてこそきみは真のヒーローになれる。きみだってバイキンマンよりアンパンマンのほうがいいだろ？一度は死んだ身と考え、これまでのワルガキから生まれ変わった新しいきみを見せてやってくれ！頼むぞ大和クン。
今回の騒動で、子どもを置き去りにした親の「しつけ」に非難が集中した。大和クンの父親は「置き去り」ではなく、しつけとして「置き去りのフリ」をしただけだったが、子どもの予想を超えた行動（車道上の範囲ではなく、暗い林の中に移動するといった行動）まで計算できなかったのだろう。戻ってみたら、姿形もなく、頭が真っ白になったにちがいない。
確かに我が子の成長を願って、言い聞かせてもダメな時、行動で突き放すことは親であれば覚えがあろう。ぐずっている子どもを前にした母親が「ずっとそうしてなさい。お母さんは行くからね」と室内やら路上やらで「置き去りのフリ」をする光景はさほど珍しくない。私は夕食前に「家を出て行け」と父親に怒鳴られ、近所の空き地で母親が迎えにくるまで腹を空かせていた幼い記憶がある。
突き放す「しつけ」にはリスクが伴う。「家を出て行け」と言ったら、出て行った我が子がヘンな人間に監禁、誘拐でもされたら大変である。私だってそうなったかもしれない。でも、悪いことをしたらひどい目に合う、を子どもの時分から叩き込もうと親はしつけるのである。ただ親が自分の親から味わった「しつけ」を当たり前のように現代の子どもに当てはめるのは無理があるのかもしれない。それを押さえつつ、「しつけ」とは、親として愛情に裏打ちされた相応の覚悟と責任で遂行されなければなるまい。
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