東京都では早くもコロナウィルスのリバウンドが始まっている。一ヵ月後のオリンピック開催時にパンデミック状態に陥っていたら、各競技会場での観戦どころの話じゃないかもしれない。
確かにワクチン接種が急速に拡大しつつあるが、とてもオリンピックに間に合うはずはない。そもそもワクチンを受けたくないという層が、若い世代を中心としてかなりの広がりを見せているとのこと。そうなると6，7割以上必要とする「集団免疫」にはほど遠い。しかも、ワクチンを２回接種していても、感染しない保証はどこにもないのである。
ところで、オリンピックを中止もしくは延期を求めた人たちや、それを支援するようなマスメディアは「オリンピック観戦したり、放送・報道する資格はない」という声を耳にした。何をかいわんや、である。議論は議論として、始まればノーサイドで選手を応援するだろう。選手たちだってそれを望むに決まっている。
もともと私のような「スポーツ観戦」を趣味とする人間にとって、オリンピックは最高の観戦ステージである。それが、このコロナ禍によって泣く泣く1年ないし2年の延期を求めたのだ。普段「スポーツ観戦」に興味のない高齢者でも「冥土の土産」としてこの東京五輪を楽しみにしている人は大勢いるに違いない。
オリンピックが始まれば楽しんで観戦し（私の場合、チケットを入手できなかったので、テレビ観戦になるが）、声援を送る。それでいい。ただし、楽しんで盛り上がった以上の負の代償をのちのち払うことにならないか、それがまことに心配。私たちはこの代償を背負う覚悟が必要になるのかもしれない。
2年前に東京池袋で87歳の男性が自家用車を暴走させ、自転車に乗っていた母子を跳ね飛ばし、死亡させた事故の公判があった。旧通産省工業技術院元院長は一貫して自身の運転操作ミスはなく、車の不具合による事故であると主張した。
まず、車の故障が発生した場合、ディーラー等のコンピューターで故障箇所の追跡と診断ができるが、微細な不調だとデータとして掴めないこともある。しかし、ブレーキが利かない、アクセルが戻らないといった重大かつ深刻なトラブルであれば一目瞭然だ。メーカーが過失逃れに改ざん、隠蔽する可能性がゼロではないものの、プリウスは販売台数の多い人気大衆車である。他のプリウスオーナーから同様のブレーキトラブルがある、との声がこの池袋暴走事故後に上がったら、メーカーとして大ダメージ。改ざん・隠蔽するほうがリスクが大きいから、これはしないだろう。その証左として、この事故前、事故後に、プリウス車のブレーキトラブルのクレームが報道されることはなかった。
となると、やはり元院長の人為的ミスとなる。不思議なのは、未来ある2人の尊い命を奪い、さらに多数の負傷者を出していながら、自身への疑いの目を向けられないこの元院長の尊大不遜な態度である。事故後の聴取では「ブレーキとアクセルを踏み間違えたかもしれない」と語っていたそうだが、入院中に体だけでなく、自尊心と自負心も回復させたのか、いっさい自らの非を認めなくなった。
被害者遺族は本当に気の毒でならない。元院長は心から悔いて謝罪し、遺族に対して身を投げ打って誠意を尽くすしか道はない。が、言い逃れと責任転嫁を繰り返すさまは醜悪の極みである。自己保身に走る元院長に呆れ、憤怒し、軽蔑の情をまことにもって禁じえない。
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