先日、チネチッタの映画館で『マネーボール』（2011年米国映画、ベネット・ミラー監督）を観た。今年も様々な映画を観て来たが（ほとんどレンタルビデオで、だが）、私の2011年ベスト１０にくい込む秀作である。
メジャーリーグを題材とした作品は何本も製作されているものの、駄作、凡作が多い中で、この作品は異例の出来映えである。映像も効果音も、脚本も配役も、音楽もスタッフも素晴らしいの一語だ。私が凡百の言葉をつくすよりも、野球ファンならまずは観てほしい映画だが、敢えて一点触れるならば、主人公ビリー・ビーン（ブラッド・ピット）がレッドソックスからGMとしての誘いを断るラストシーン。
ビリーが金による評価を絶対視せず、過去の過ち（ビリーが大学に進まず、プロ入りを決断した決定打が多額の契約金だった）を繰り返さない意思をラストで鮮明に表現されているのがグッときた。10億円近い金額を断ったビリーはその後も貧乏球団のオークランドアスレチックスに留まり、松井秀喜選手をエンゼルスから安い年棒でトレードさせ、アスレチックスのユニフォームを着させたのである。まさに「事実は小説より奇なり」のストーリーだ。
そういえば、日本の新球団・横浜モバゲーベイスターズの監督に工藤公康氏（元西武投手）が一時確実されたが、高田新GMとのチーム作りで話し合いが不調に終わり、工藤氏の新監督誕生とはならず、代わりに中畑清氏が正式に決まった。工藤氏もビリーと同様に多額の契約金（3億円？）を積まれたものの、金に目が眩まず、自分の信念に従ったのである。拝金主義が闊歩する憂うべきこの世の中で、彼らは間違いなく絶滅危惧種の存在であろう。それだけにひとを惹きつけてやまない。
私など、目の前に札束がドーンと積まれたら、信念などシンネー、と言って、すぐ引き受けちゃうんだろうなあ…ま、札束積まれることなどないけどね（笑）。
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