以前から注目していた新谷（にいや）仁美選手が世界陸上で1万メートルに出場し、5位入賞を果たした。本人はメダルを狙っていたそうで、レース後は悔し涙にくれていたが、インタヴューに答える姿は実にさわやかだった。
新谷らしく序盤から先頭に出て、3500メートルすぎからトップをキープ、9500メートルまでアフリカ勢を後ろに従えて走るという見事なレースぶりだった。残り一周となったラストスパート勝負ではエチオピアとケニアの精鋭4人に置いてきぼりをくったものの、新谷の持ち味を遺憾なく発揮し、途中から雷雨に見舞われるという悪条件の中、渋井陽子選手の持つ日本記録より8秒遅いだけの30分56秒70で自己記録を塗り替えるレースとなった。
とにかく、強豪ひしめく中（この種目絶対女王で、今回も優勝したエチオピアのディババを含む）最初から先頭に出て走るには勇気と度胸がいる。新谷は常に後ろを振り返ることなく、前だけを見つめて走っている。その姿はまことに神々しい。新谷がスポーツ史に名を刻むランナーになるかどうか私にはわからない。だが、好きなランナーとして私の胸に刻まれることは間違いない。
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