旧知のNさんに桜木町の旨い店を案内してもらった。夕方、仕事先のビル前で待ち合わせ、堤燈の明かりが灯されだした軒店を眺めながら、野毛の細い道を5分ほど歩くと、Nさんはある店先で足を止め、店内を覗くと、「ここにしましょう」と私を中に誘った。
１軒目は焼き鳥の「末広」。いつも混んでいて、入ることがなかなか叶わない店だそうで、今日は珍しくテーブル席に空きがあり、入ることに決めたという。「味は今ひとつなんだけど、なぜか人気があるんです」とはNさんのコメントだが、その通り、砂肝、レバー、皮等の味はごく普通で、どこに人気の秘密があるのだろうと思った。店主の恵比須顔が千客万来を呼んでいるという噂もあるらしいが…。
２軒目は同じく焼き鳥屋の「若竹」。「末広」はどうやら衝動的に入店してしまったらしく、Nさんにとって焼き鳥といえばこの「若竹」が1番だという。適当に焼いてもらった焼き鳥の味はどれもジューシーだったり、カラッとしていたり、モチモチしていたりと、それぞれの食材の旨みをうまく引き出していた。とくに鳥の「精巣」（Nさんは「キンタマ」と呼んだ）は初めて口にし、他の部位にはない食感と旨みに舌を巻いた。
３軒目に行くと、すでにビールと焼き鳥で満腹状態の私。一方、Nさんはすこぶる意気軒昂、ビールも食欲もまだまだいけるといった様子。そこで連れて行かれたのが「すし処纏（まとい）」。高級店で味もかなりのレベル、とのことだったが、私は適切な判断ができる舌の状態にはなく、最初に食べたウニは旨いと思ったものの、あとは1人前を胃に収めるのがやっとのさま。ああ、やっぱり焼き鳥屋のハシゴは老骨・老体には堪えるわい。Nさんはバーベルで鍛えた肉体美を誇る50歳を少し出たぐらいのスポーツマン。そして最後に、「シメにラーメンはどうですか？」のNさんのひと言に唖然・呆然・愕然！
Nさん、魅力的な（？）シメですけど、もう満ち足りています。今夜はありがとうございました。
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