元ＴＢＳワシントン支局長の山口敬之から性暴力を受けたとして、山口を告発したジャーナリストの伊藤詩織さんが著した『Ｂｌａｃｋ Ｂｏｘ』（文芸春秋）を読んだ。最近、山口が雑誌に伊藤さんへの反論を書いたそうだが、どうにも往生際の悪い性悪男という印象は拭えない。
いかように弁解弁明しようとも、心神喪失した若い独身女性を家庭ある５０男がホテルに連れ込むさまは下心が見え透いており、知性と教養があり、社会的地位と信用のある人間がやることではなかろう。それも、山口は伊藤さんの仕事を欲しがっている弱みにつけこんで、いかにも仕事上の話し合いを装い、酒席の場に誘い出し、デートレイプドラッグか何かを仕込んだかどうかは定かでないものの、店で意識朦朧となった伊藤さんを定宿に引っ張り込んだ。
仕事を餌に若い女性をレイプしたといった事実を認めたら、ジャーナリストとしてばかりか社会人としてもオシマイだから、山口は絶対に認めない。第三者が認めるような客観的事実を突きつけられない限り、否、突きつけられても潔白を言い募るだろう。何といっても、ときの総理大臣の腹心とも呼ばれるほどの“権力者”だから。
安倍総理の覚えめでたい飼い犬記者である山口はその立場を悪用し、警察権力を動かした疑いがもたれている。当事者しか知りえないホテルの密室をいいことに、結果、みごと「準強姦容疑」を不起訴に持ち込み、刑事告訴は免れた。伊藤さんは涙を呑み、民事訴訟で山口からのレイプ被害を訴えていくという。
山口のような野蛮卑劣な強姦男でも逃げおおせてしまう社会で本当にいいのだろうか。とはいっても、男女格差世界ランキング１１４位（１４４カ国中）ではとても望めまい。再度、男女平等に関して、日本の男性はむろん、「女の敵は女」と同性同士で足を引っ張り合う日本女性の意識改革も図らねばならない。それには幼児からの男女平等・同権という人権教育にもっと注力すべきだ。そして、教育界での女性の地位を真っ先に引き上げ、女性のリーダーが半数程度占める体制づくりを第一義に取り組んでほしい。
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