横綱日馬富士の貴ノ岩に対する暴行事件が錯綜している。本来ならばモンゴル出身力士同士の内輪もめ程度の扱いとなる話であるのだが、事実関係が右往左往して判然とせず、加えて貴ノ岩の親方・貴乃花が例の唯我独尊的性格も手伝って、直接事件とは無関係の相撲協会との確執を取り沙汰され、ほとんど迷走状態に陥っている。
そもそも貴ノ岩が「俺は横綱白鵬に勝った。これからは俺たちの時代」と言ったことを、白鵬が説教したところから始まったらしい。白鵬が「いいネェ。若いのはそのくらいの心意気がなきゃだめだ。早く横綱の階段を上がって来い」ぐらいの鷹揚な態度で激励に転じていれば、こうした暴行事件は起こるはずもなかった。
暴力を振るった日馬富士が横綱失格なのは言うまでもないが、白鵬の狭量な対応は大横綱らしからぬお粗末さで、面前でそうした事態を風格なり品格で防げなかった点も併せ、白鵬の道義的責任は無視できない、と個人的に思っている。
１８日（土）午後５時から「クラブチッタ」（川崎ラ・チッタデッラ内）でジリオラ・チンクエッティのライブが催された。２４年ぶりの日本公演ということで、冷雨が降る中、自宅から程近いそのライブハウスに足を運んだ。
いつもはスタンディングで若い客層がライブを楽しむ小ホールだが、この日は薄い座布団を敷いただけの折り畳み椅子が６４０席ほど並べられていた。立ち見と２階席を加えても７００人ぐらいか。６０年代から７０年代、爆発的な人気を誇ったカンツォーネの妖精も時代と共に忘れられたかと思いきや、私より年配の男女で館内はむせ返るような熱気を漂わせていた。
アコースティックピアノ、シンセサイザー、バイオリン（３）、チェロ、エレクトリックギター（アコースティックギター）、エレクトリックベース、ドラム、そしてバックボーカル（女性一人）という編成のバックバンドを従えて、純白のロングドレスで登場したジリオラ・チンクエッティは歌う妖精というより、歌う妖婆だった！
ジリオラはこの１２月で古希を迎える７０歳とは思えない熟女妖艶ぶりだった。前半の１時間で１７曲を歌いきり、さすがに休憩時間を３０分以上たっぷりと取ったものの、後半でアンコール曲を含め１２曲を歌い通した。若い頃は音程も声量も心もとなかったが、今や堂々たるイタリア歌手の風格と貫禄が見て取れた。昔のジリオラの面影を抱いてきたジジババは度肝を抜かれたのではないかと思う。
私も御多分に漏れず、度肝を抜かれたジジのひとりである。いちばん驚いたのは曲目の構成だった。往年のヒット曲を並べて、ありがちのファンサービスになるのでは、と予想していたけれども、交互に、時として連続的に日本のオールドファンが耳にしたこともない新たなオリジナル曲を歌った。それがみんな実にいい曲なんだなあ！今日的なレディ・ガガ、ニッキー・ミナージュ、テイラー・スウィフト、そしてアデルも聴いているけれど、ジリオラ・チンクエッティも頑張っていて、なんとなく嬉しい気分に包まれるライブとなった。
往年のアイドルが老い、衰えた姿をさらすのは観るほうもシンドイ。かつてのファンからすれば、偶像を壊さないで、と叫びたくなる。そうしたアイドルが少なくない中、ジリオラ・チンクエッティは清純無垢な美しい歌姫から魅惑的妖艶な女王に変貌を遂げた。ブラボー！ジリオラ！最後にイタリア語で─
Sono molto content di essere qui stasera. Alla prossima!
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