まだ90日ほど残しているが、コロナ元年である2020年に亡くなった人たち─特に私個人として惜別の思いを強く抱いた人について触れてみたいと思う。
野村克也（野球人、2月11日84歳、心不全）
王、長嶋の影で野球道を貫いた大選手・監督・解説者。捕手時代に磨いた頭脳と眼力を生かして、名著を数多く残す。私が大ファンだった「城之内邦夫投手」を高く評価した点でも、選手の力を見抜く観察力と分析力は傑出している。イチローへの分析も鋭く印象深い。
大林宣彦（映画監督、4月10日82歳、肺がん）
尾道3部作など詩情豊かな作品を創出、特に『さびしんぼう』は私の大好きな1作だ。大林監督の思想と姿勢を知りたければ『ぼくの映画人生』の一読をお勧めする。
トリニ・ロペス（歌手＆俳優、8月11日83歳、死因不明）
ラテンリズムをギターで刻みながら歌う『天使のハンマー』で脚光を浴びた。が、私は彼のバラードシンガーとしての魅力に真価があるとみる。『砲艦サンパブロ』のラブバラードや『シェルブールの雨傘』のテーマ曲は必聴もの。
そのほか、私の高校時代、「鶴見工業高校ギター同好会」としてＴＢＳテレビの「ヤング７２０」に2回出演したときのゲストだった弘田三枝子（7月21日73歳、心不全）とマモル・マヌー（9月1日71歳、心筋梗塞）。弘田三枝子が私たちの演奏を聴いて、「いいハーモニーね」と褒めてくれた言葉が今も耳に残る。ドラマーとしてより、甘い歌声が持ち味だったマモル・マヌーとゴールデン・カップスの一員だったルイズ・ルイス加部もマヌーと同じ9月に多臓器不全で亡くなった。享年71歳。彼の疾走感溢れるベースは今聴いても少しも色褪せない。
そして、世間を驚愕させた人気俳優たちの自裁。芸風が広がり、いい味が出てきた三浦春馬（7月18日30歳）、『相棒』で存在感のある美しい横顔を見せた芦名星（9月14日36歳）、国民的女優ともいえる、健康的で明るい笑顔が爽やかな竹内結子（9月27日40歳）。いずれも将来ある身の唐突過ぎる死。連鎖的な死をめぐって、ＳＮＳ上ではいらぬ噂がたっているようだが、もはや不帰の人を貶めるような卑しくも空しい書き込みだけはやめてほしいもの。
合掌 （敬称略）
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