「桜を見る会」の会費補填疑惑が再燃した。安倍が最高権力者の場から降りた途端、捜査が動き始めるといったタイミングである。といっても、責任が問われるのは秘書までの
話で、安倍前総理が法的に処罰の対象とはなりそうもない。
何度も政治の世界で見せられるトカゲの尻尾切り。国会で安倍は「桜を見る会」前日の夕食会における会費5000円以上の補填はない、と言い切った。事実か否かはホテル側からの領収書があれば一目瞭然だったが、安倍側、ホテル側双方とも提出を拒否した（事実は5年間で900万円の補填）。それでウヤムヤにできるところが政治権力の恐さである。
政治家には高いモラルと発言の重さの自覚と責任が求められる。その点で秘書の独断によるもの、として逃げようなどそうは問屋が卸さない。国会で虚偽発言を繰り返した安倍の政治責任は軽視できない。と言いつつ、世間はコロナウィルスと景気の動向に目が集中。世論の（批判の）盛り上がりは期待薄か。
いまだトランプ大統領は選挙の敗北を認めていないが、来年1月20日に就任するバイデン次期大統領の政権移行作業がようやく動き出した。
トランプ大統領の「選挙不正」の異議により各州各地で裁判がおこなわれているものの、アリゾナ州、ジョージア州、ペンシルベニア州では、何ら根拠も証拠もないとして、連邦高裁から却下されている。トランプは連日ツイッターで「不正な選挙。我々は勝つ。郵便投票は病的な冗談だ」など繰り返し、とうとうツイッター社からその発言に警告が出される始末。そして、国内の法的秩序と国民の利益を守る米国土安全保障省が「米国史上、最も安全な選挙だった」との声明を明らかにした。
トランプが頑張れるのも、ネット上で民主党やマスコミによる「陰謀論」として、トランプを支持する層が多く存在しているからだろう。それはアメリカ人ばかりか、日本人にも広がっているから驚く。トランプ大統領こそ民主主義の守護神、とまで耳にすると開いた口も塞がらない。
自分の意にそぐわなければ側近を片っ端から首にし、ツイッター上では筋の通らない思いつきと思い込みの間違った発言を繰り返す。自分を批判する大手メディアを目の敵にして、証拠も出さずにフェイク呼ばわりするトランプ大統領。そもそも大統領として大前提である国民の模範となるべき道徳心や公共心がトランプから感じ取れない。
さらに悪いことに、億万長者なのに税金をまともに納めていない数々の脱税疑惑、セクハラ、性的暴行、不倫等の女性からの告発てんこ盛り、そして、ロシア疑惑や司法妨害など、トランプに課せられた訴えは山のよう。であっても、トランプを支持する側の言説は、すべてマスコミと民主党が仕組んだ陰謀とし、トランプは経済政策でも成果を多く残した優秀な政治家であるのに、よってたかってトランプを叩き潰そうとしているという。
トランプ大統領がホワイトハウスを離れようとしないのは、前述した悪行が明るみにされ、訴追収監されるのを恐れているからだといわれている。「大統領の免責特権」を保持したいためだろうが、今後はことを荒げずに辞める条件として「恩赦」を引き出そうとするのでは、とは一部関係筋の声。
選挙不正の事実も、トランプ大統領の正当な評価も、「陰謀論」の有無も、後世でどのような裁定を下すのか興味深いところである。
過日、神奈川近代文学館に「大岡昇平の世界展」を友人と見に行く。幼少時より現存する多数の手書き原稿から、戦争文学の第一人者である大岡の息遣いが伝わってきた。一兵卒としてフィリピンにおける苛烈過酷な極限状況をよくぞ生き抜いたものだと、改めて生死の分れ目は何なのか沈思黙考した。剛直な大岡がゴルフやピアノに興じている柔らかな表情が印象に残った。
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