まったく何ということをしてくれたのか。大事な選挙前だというのに、これでは安倍晋三元首相の弔い合戦として、自民党の単独大勝利間違いなしではないか。安倍のご家族には心からお悔やみ申し上げるが、日本の経済危機を誘導し、「モリ・カケ・サクラ」の不実で悪辣な政治家・安倍晋三の名は、不幸不運なヒーロー的宰相として永遠に刻まれることになった。私の中では浅沼稲次郎社会党委員長の暗殺に次ぐインパクトである。
自民党内の反安倍勢力は、思いがけない形で重石がとれ、心中ほくそ笑んでいるかもしれない。キングメーカーたる安倍の顔色を窺っていた岸田総理は、どういった方向で政権運営を図っていくのか、今後に注目が集まるだろう。これを機に、またしても麻生太郎あたりが発言力を強めてこないか、気になるところ。
原発推進、防衛費増強、憲法第九条改悪などを掲げる守旧派勢力が、安倍の死によって後退の道を辿るとも思えない。野党の維新の会一派とともに、広く深く右翼集団化しているからだ。自民党のハト派はもはや見る影もない。
社会保障の充実、経済不況の建て直し、原発ゼロを求める野党（の一部）勢力にとって、争点がうやむやどころか、野党としての存在そのものが、安倍元首相のドラマチックな退出によって、薄まってしまうような危機感を覚えているのではないだろうか。投開票はいよいよ明後日に迫っている。話題性に欠く参院選に安倍の死がカンフル剤となり、自民党に地すべり的大勝利をもたらすのでは、と極めて憂鬱な気分である。
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