第5回ＷＢＣは日本の優勝で幕を閉じた。いろいろなドラマを生んだ大会だったが、特に決勝戦での大谷対トラウトの対決は今大会のエンディングに相応しい最高の見せ場となった。
剛球右腕の大谷か、どんな球でも簡単に外野席に叩き込めるトラウトか、固唾を飲んで見守った全６球。最初はスライダーが真ん中低めに外れ、そこから4球連続ストレートを投じ、トラウトはほぼ真ん中の160キロの直球をとらえられない。そして、ツーボール・ツーストライクから投げた164キロの豪速球は三振を狙った大谷の渾身の１球だったものの、大きく外れ、中村捕手といえども捕球できず、バックネット裏に。しかし、大谷は、空気を切り裂くような緊張感の中、フルカウントで四球を出すと勝ち越しランナーを出すピンチの場面にも臆せず、これ以上ない最高のスライダーを投げ込んだのである。内角から外角へ大きく横にスライドするボールに、トラウトのバットは空を切り、日本のゴールドメダルが決まった瞬間となった。
この大会で日本が優勝できたポイントは、やはりメキシコ戦での逆転サヨナラ勝利を飾れたことだろう。特に私は4番の吉田の同点スリーランが大きかったと思う。あそこで吉田が凡退していたら、その先の追い上げが可能だったか、甚だ疑問だ。そしてもうひとつ付け加えるならば、米国戦での5番村上の同点ホームラン。6番ターナーのホームランで、米国はやはり強い、と弱気の空気が支配しそうになりそうだったところを、あの１発で「元気１発」のカンフル剤となった。村上はさすがだった。
私が印象に残った選手をひとりだけ上げるとすれば、決勝戦で先発起用された中村捕手。様々なタイプの投手を巧みにリードしただけでなく、それまで一度も受けたことのない大谷の速球と変化球を、決勝戦最終回の重要な場面で見事にさばいた。キャッチャーとしての技量も捕手ＩＱも秀でている素晴らしい選手だと感服した。
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