全仏オープンテニスで加藤未唯選手が混合ダブルスで優勝を果たした。急造パートナーのティム・プッツ選手（ドイツ）とのコンビネーションがよかったにちがいない。しかし、そもそも注目を集めたのは、女子ダブルスでの加藤の失格騒ぎだった。
正直なところ、加藤が失格になるのは致し方ないだろう。ボールガールにダイレクトにボールが当たるなどあってはならないことだからだ。むろん加藤は故意に当てたわけではないが、結果としてボールがボールガールの頭にぶつかった。
ボールガールはボールによる痛みというより、どちらかといえば、突然の衝撃によるショックで泣き続けているかのようだった。問題は加藤がボールを返球する際に、打つ方向を確認しなかったことに尽きる。
きちんとボールを打つ方向に目をやっていれば、今回の騒動に発展することはなかった。加藤はその前の自分のプレイに心が奪われ、周囲へ注意を向けられなかったのかもしれない。だが、加藤はこの失格で失った以上のものを手にしたのではないか。
それは何といってもほぼ無名だった加藤未唯という存在が世界中に認知されたこと。それも良い意味で。さらに、屈辱にも似た悲哀を味わい、失意の底にあっても不思議ではないのに、その後の混合ダブルスで初優勝を飾るというこれ以上ないドラマを演ずるヒロインとなってしまった。ハガネの神経、それとも天性の鈍感力がなせる業？いずれにせよ、あっぱれ！加藤未唯選手。
日本に戻れば、このヒロインを放っておくはずはない。昼夜を問わずマスコミは追いかけ回すだろうから、以前の無名の気楽さとは縁遠い生活になるかもしれない。引退後の進路にも選択肢が増え、将来に明るい影響を及ぼすかもしれない。まさに「災い転じて福となす」である。ま、何が幸か不幸かわからないけどね…。
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